AI・機械学習をビジネスに応用したい人向けの資格「G検定(JDLA Deep Learning for GENERAL 2019 #3)」を取得しました

G検定はAI・機械学習をビジネスに応用したい人向けの資格で近年注目を集めています。AI・機械学習は「何ができるか」を誤解しているひとが非常に多く、魔法のように何でもできると思いこんでいる人や、以前のAIや機械学習のイメージを払拭できずにまだまだ「おもちゃ」だと思いこんでいる人まで様々です。

G検定はこれらの誤解を乗り越えて、現実的にAI・機械学習をビジネスに応用するための「視座」を身につけるためのうってつけの資格です。本記事では実際にG検定(JDLA Deep Learning for GENERAL 2019 #3)を受験した体験と得られた知見を紹介したいと思います。

はじめに

本記事は2019年11月9日に行われたG検定(JDLA Deep Learning for GENERAL 2019 #3)の受験体験談です。G検定はAI・機械学習をビジネスに応用したい向けの資格ですが、この分野の進化は非常に速いので資格の名称自体に取得した時期が入っています。この体験談は2019年の3回目のG検定の体験談なので実際に受ける際には最新の情報を参照するようにお願いいたします。

また、本記事は筆者の体験談になりますので、「素人が短期間で取得した」系の話ではないのでご注意ください。以下参考スペックです。  

  • 機械学習に取り組み始めて1年目のソフトウェアエンジニア
    • 一般的なITスキルは持っており、ソフトウェアの開発経験もある
    • 機械学習環境を構築して、ディープラーニングを実際に動かしたことがある
      • いくつかのサンプルは動かしてみたけど実務への応用はまだまだ・・・
      • 数学が苦手で理論の習得には苦戦している・・・
    • AIや機械学習に関して、体系的な勉強をしたことがない
      • とりあえず動かしてみような的なノリでやってきた・・・
      • 実は数学が苦手・・・

G検定とは

一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA) が実施している検定試験です。第一回が2017/12/16(土)に実施されており、最近は年に3回実施されています。

JDLAが主催している試験は以下のとおり「G検定」「E資格」の2つがあり、前者がビジネスマン向けで後者がエンジニア向けです。

 
正直自分はE資格を受けたかったのですが、**十万円オーバーの JDLA認定プログラム**が受験資格になっていたのでとりあえず見送ってG検定を受けることにしました。G検定の概要は以下のとおりです。

  • 概要:ディープラーニングを事業に活かすための知識を有しているかを検定する
  • 受験資格:制限なし
  • 試験概要:120分、小問226問(前回実績)の知識問題(多肢選択式)、オンライン実施(自宅受験)
  • 申込期間:2019年 10月1日 (火) 13:00 〜 10月31日 (木) ^1
  • 試験日: 2019年 11月9日 (土) 13:00より120分 ^1
  • 受験料: 一般 12,000円+税 学生 5,000円+税
  • 受験サイト:https://www.jdla-exam.org/d/

公式サイトより一部抜粋

上記のとおり受験料は少し高いですが、自宅で受けられるので気軽に受験可能です。もちろん試験中のインターネットの検索も可能なのですが、問題数も多く1問に30秒程しかかけられないのであまり検索に期待しないほうがよいです。

今回自分が受験した2019年の3回目の試験では4,652名が合格し、合格者数は累計14,523名になったようです[^2]。**今回の合格率は70.70%**でここ最近の合格率もだいたい70%程度で推移しています。合格率が高いからと言って簡単だったかと言うとそのようには自分は感じませんでした。その辺はこのあとの記事で触れたいと思います。

[^2]: 詳細は プレスリリースを参照してください。

出題範囲

学習のシラバス

公式サイトが公開しているG検定の学習のシラバスは以下のとおりです。

  • 人工知能(AI)とは(人工知能の定義)
  • 人工知能をめぐる動向
  • 探索・推論、知識表現、機械学習、深層学習
  • 人工知能分野の問題
  • トイプロブレム、フレーム問題、弱いAI、強いAI、身体性、シンボルグラウンディング問題、特徴量設計、チューリングテスト、シンギュラリティ
  • 機械学習の具体的手法
  • 代表的な手法、データの扱い、応用
  • ディープラーニングの概要
  • ニューラルネットワークとディープラーニング、既存のニューラルネットワークにおける問題、ディープラーニングのアプローチ、CPU と GPU
  • ディープラーニングにおけるデータ量
  • ディープラーニングの手法
  • 活性化関数、学習率の最適化、更なるテクニック、CNN、RNN
  • 深層強化学習、深層生成モデル
  • ディープラーニングの研究分野
  • 画像認識、自然言語処理、音声処理、ロボティクス (強化学習)、マルチモーダル
  • ディープラーニングの応用に向けて
  • 産業への応用、法律、倫理、現行の議論

シラバスのとおり、AI/機械学習/ディープラーニングに関連する理論とビジネスに関連する事例、法律から幅広く出題されます。実際にこのシラバスはAI/機械学習/ディープラーニングの全体像を理解するのにバランスがよく組まれているので、AI/機械学習/ディープラーニングに関わる可能性があるビジネスマン、エンジニアはぜひ押さえておいたほうが良い内容になっています。

試験の例題

実際に公式ページに掲載されている試験の例題を2問引用します。1つ目は人工知能をめぐる動向に関連するものです。

問題:国際的な画像認識コンペティション“ILSVRC2012”について、正しいものをすべて選べ。

  1. 画像認識は、2017年現在でディープラーニングが最も高い精度を実現できるタスクである。
  2. ImageNetとは、手書き文字認識のためのデータセットである。
  3. 優勝チームはトロント大学のジェフリー・ヒントン教授率いるSuperVisionである。
  4. このコンペティションであげられた成果は、「人工知能研究50年来のブレイク・スルー」と称された。

2つ目はディープラーニングの手法に関連するものです。

問題:次の文章の(A)、(B)の組み合わせとして、最も適しているものを1つ選べ。 時系列データの分析には、もともと( A )が最も適していると考えられていたが、時系列データのひとつである音声処理の分野では( B )が非常に高い精度を記録している。

(A)リカレントニューラルネットワーク (B)畳み込みニューラルネットワーク
(A)リカレントニューラルネットワーク (B)Autoencoder
(A)畳み込みニューラルネットワーク (B)リカレントニューラルネットワーク
(A)畳み込みニューラルネットワーク (B)Autoencoder
(A)Autoencoder (B)畳み込みニューラルネットワーク
(A)Autoencoder (B)リカレントニューラルネットワーク

両方とも公式ページには解答が載っていないのでここでもあえて回答は書きません。受験する方はぜひ調べて解答できるようにしておいてください。実際にはこれらの問題は比較的優しいの部類に入り、実際の試験にはこれよりも難易度の高い問題もたくさん出題されます。

G検定対策

実際に自分が行ったG検定対策は、以下の3冊の本を読みながら理解の怪しいところを適宜Webで調べていくというものです。
まず、一冊目はG検定の公式テキストでこれは外すことができません。この本は2回読み直しました。

 
2冊目は「徹底攻略ディープラーニングG検定問題集」(通称:黒本)です。この本はKindle版で購入して、マイノートの機能を活用して問題と解答を行ったり来たりしながら勉強しました。試験前に復習で全体を通して解きました。

 
3冊目は「AI白書」です。この本はボリュームがあるので全ては読んでいません。自信がなかった第4章の「制度政策動向」を重点的に読みました。

試験に費やした勉強時間と費用

以下は純粋にG検定対策に費やした勉強時間と費用です。趣味でディープラーニングで遊んだ時間と費用は入れていません。

  • 勉強時間: 合計20〜30時間
    • 期間: 1ヶ月
    • 休日を中心に時間を確保
  • 費用: 合計20,823円
    • 試験: 13,200円 (税込み)
      • 深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト) 公式テキスト Kindle版: 2,772円
      • 徹底攻略 ディープラーニングG検定 ジェネラリスト 問題集 徹底攻略シリーズ kindle版: 2,079円
      • AI白書 2019 Kindle版: 2,772円

受験した感想

7割が合格する試験と聞いて簡単なのかと思っていたら試験は以外と難しかったです。特に前半部分に出題された制度や法律関係はやはりもう少しやっておけば良かったと後悔しました。

試験は本当に時間との戦いで一応10分前に解き終わりましたが、途中で時間が足りなくなると思いかなり焦りました。試験の出題範囲は上記の3冊の本の範囲だとは思うのですが、しっかりと理解していないと解けない問題が多かったという印象で少なくとも「易しい試験」ではないと思いました。

実際に「資格の難易度」というサイトでは難易度は”「B」普通“に分類されおり^3、同難易度には以前に受験したAWS ソリューションアーキテクト アソシエイトも含まれます。つまり、しっかりとした対策なしでは受からないと思っておいたほうがいいと思います。

試験は土曜日(11/9)に受けて結果が来たのは翌々週の月曜日(11/18)でした。前回は金曜日に通知が来たという情報があったので週末はだいぶもやもやしましたが、合格していてよかったです。合格通知は以下の通りシンプルなメールで来ました。合格証は後ほど発行されるようです。

まとめ

実は最初シラバスを見たときにビジネスするのにディープラーニングの手法まで身につける必要があるのかと訝しがりました。また、エンジニアがG検定を受ける価値があるのかも懐疑的でしたが現在は実際に受ける価値のある試験だと思っています。

G検定を受ける過程でAIとディープラーニングの現実と本質の両方の理解が深まるので、今後AIの利活用が重要視されることを鑑みるとその重要性も比例して高まってくるものと考えられます。ビジネスに関しても現実的にはディープラーニングの理論な本質部分の理解は必須だと実感しました。それはAIとディープラーニングの理論は応用範囲は広いが、個々の事例に適用するためには多くの個別の課題があり、理論を知らないと何が課題になっているかが分からないからです。現在実現されているのは弱いAIなので適用分野や活用方法は慎重に検討する必要があることをよく理解できたことがG検定を受験した一番の収穫だと思っています。

本記事が、「G検定」を受ける方の一助になれば幸いです。

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